沖縄県名護市(沖縄島)のNiCT沖縄亜熱帯計測技術センターの
偏波降雨レーダ(COBRA)が観測した渡り鳥エコー
2005年6月29日
沖縄島を高度1.5 kmと4 kmを太平洋を越えて飛来した渡り鳥エコーの偏波特性
高度 1.5 kmの渡り鳥;太平洋を越えて飛来し、1640 JSTに伊是名島に降りたのを観測(エコーが島の周りを囲んで消えた)
パラメータの簡単な説明
- Z
レーダ反射因子(反射強度)。
- ZDR
水平偏波と垂直偏波のレーダ反射因子の比 ZDR =10 log10(Zh/Zv) は
散乱体の形状を表すパラメータで、正の場合横長、負の場合縦長。
- ρhv
水平、垂直両偏波間の相関係数 ρhv は、散乱体の規則性/安定度を示すパラメータ。
レーダはrange, sweep方向で平均化するため、sampling volume内の水平、垂直偏波
の瞬時観測値の相関係数を算出することで、散乱対のバラツキや振動の目安になる。
- VEL
ドップラ速度(レーダに対して近付くか、遠ざかるか)
大気エコーのZDRは0に近く、ρhvは1に近いため、大気エコーと生体エコーの分離ができる。
つまり、図中、RHVが青色でないエコーが渡り鳥エコー(注: echo edgeのρhvは小さくなる)
PPI (1.4 degrees elevation angle)
高度 4 kmの渡り鳥;沖縄島で高度を下げる;down-slope echoは沖縄島に沿って北東方向に降下した渡り鳥
層状のエコー(RHIに直行する方向に飛行)は高度 5kmに現れ、徐々に3 kmまで降下した。
その後、急降下を始めDown-slopeエコーを形成し、ZDRは顕著な負のシグナルを示した。
RHI (41.2 degrees azimuth angle)
高度 4 kmの渡り鳥;沖縄島上空で高度を下げ、西へ転進
旋回中の渡り鳥エコーは、レーダに近いサイドで負(縦長)のZDRシグナルを表示
ρhvは負のZDRを示したエコーは大きな値を示し、正のZDRを示したエコーは小さな値を示した。
PPI (8 degrees elevation angle)
補足情報
- 沖縄地方は6/27に梅雨明けし、6/29は太平様高気圧が沖縄島まで張り出し、南東〜南風
- ゾンデは高度1kmに下層ジェットを観測
参考文献
Minda, H., F. A. Furuzawa, S. Satoh, and K. Nakamura, 2008,
Bird migration echoes observed by polarimetric radar
IEICE Trans. Commun, E91-B(6), 2085-2089.